あの世で誰か雇えるかな

こんばんは。日程が教員採用試験とガッツリ被ってしまい、お盆に行われる部活の合宿に行けなくて、そこそこ寂しい思いをしたせりちゃんだよ。わたしの所属する部活の合宿は毎年お盆に開催されるので、お盆の期間に家にいるのは実に4年ぶりだった。

大学1回のときのお盆って、実はママの初盆だったんだけど、パパの反対を押し切って部活の合宿に行っちゃったわたし。ああ…なんて親不孝者だったんだ…と思う。合宿はとても有意義だったから、今でも後悔は一切してないけど、ずっとママに対する申し訳なさが拭えなかった。

そこで、わたしは決意したのである。今年はお盆にうちに居られるんだから、しっかりお盆をやってあげようではないかと。

さて、お盆といえば精霊馬。きゅうりとなすで、ご先祖様があっちとこっちを行き来するための乗り物を作るってやつだ。野菜を買いに行こうかなと思ったけど、そういえばママはそういうのをやたらと毛嫌いしていた。

ママはわたしよりしっかり者ではあったけど、同時に天然で頭がお花畑な人だった。クリスマスとかチャペルとかかわいくてオシャレっぽいものを好み、線香とかお仏壇とかそういうのは好きじゃなかったようだ。だからといって別にクリスチャンな訳でも無かったから、単なる偏見だったんだろうなあと思うので、わたしとしてはなんとも微妙な気持ちにはなるが、多分、とりあえず、ママは精霊馬とか好きじゃあない。

いくら風習とはいえ、本人が嫌がっていたものを置いても良いものか。「ママがもし死んだら菊とかは嫌いやからカーネーションとか飾ってな!」ってずっと言われていたのに、実際にお葬式の準備をした時わたしはまだ高校生で、周りの大人たちの圧力に勝てず、結局カーネーションもチューリップもバラも1つも飾ってあげられなかった。悔しかった。

もうそんな想いはしたく無かったので、暫く考えた挙句、わたしの部屋に飾ってあった乗り物を置くことにした。TOYOTAのCELICA、トミカである。

カラーはイエローでドアのところにCELICAってロゴが入っててめっちゃカッコいい。昔パパが乗ってた車だったけど、娘に同じ名前を付けるのを許したくらいなんだから、多分ママだって好きなはず。

わたしにとっては考えた末の結果だったけど、周りから見たらとんだ奇行なので、よく知ってる親戚から、誰の何なんだかよく分からない親戚どもにまでめちゃくちゃイジられた。パパもそれに乗っかって、それ以外のわたしの変な話とか、外でいい子ぶってるけど家ではだらしがないとか、そんなことをペラペラと話して笑いを取るもんだから心底不快だった。家にお客が来たら大人が配偶者や子どもを無駄にディスる文化を根絶やしにする会を開きたい。不適切なお笑い反対。

こんな風にまあ本当にイライラしたけど、実際ママがトミカで帰ってこれたのかとか分からなかったし、自信がなかった。夢の中にも出てきてくれなかったし。やっぱりダメだったかな、悪いことしたかなあとか思いながら、教採の勉強をしてるうちにお盆が終わった。

そんな昨日の朝のことである。わたしの夢の中にママが出て来た。わたしとママは昔住んでた家にいて、明晰夢っていうの?わたしは夢の中で大抵は自由に動くことができるので、その時もママと沢山話しをして、夜に隣り合わせで布団を敷いて眠った所で目が覚めてしまった。起きた瞬間書き留めようと思ったのに、話した内容はよく覚えていなかった。なんとなくだけど、いつもみたいに何かわたしを肯定してくれていたような気がする。すごく幸せな夢だった。

はあ、親戚の言葉に傷ついたり、心配したりして損した。遅かったけど、トミカでもちゃんと帰って来たじゃーんと思った。よくよく考えたらママは筋金入りのペーパードライバーだったから、運転に時間がかかったのかもしれない。確かクラッチとか付いてるし。来年のお盆は、代わりに運転してくれる人が必要かな。